August 14, 2007

すすきのOPENスナック


 灼熱の太陽が地平線に消えても、なお残していった情熱は北緯43度の歓楽街にねっとりとへばりついていた。
「ママ、今日は女の子が少ないねえ。」ごめんね、お盆営業だからみんな田舎に帰っちゃったの。 アケミやフシコは、札幌だけど若いから遊びに夢中よ。なんて言葉は飲み込んで、マダムはちょっと言い訳をした。
 彼女はこの土地の女だから、お盆や正月に帰省する経験がない。 子供時代は田舎が欲しいなんて思ったこともあったが、今では冷房の効いた店で、帰省のひとを待ち構えるスパイダーな自分が天職だと思い始めていた。
 12時を過ぎてピンク電話が鳴った。 あら、Kちゃん!久しぶりね。いいわよ、早くいらっしゃい。ほどなく現れた日焼けして精悍な面持ちのKちゃん。 首には革紐の真ん中にブルーの十字架がついている輪。 あら、宗旨替えでもしたの?「いや、娘がくれたんだ。」まあ、離婚してもちゃんとお嬢ちゃんに会えるんだね。
 カウンターの奥にいたマーちゃんがぎょっとした感じで連れのレディと顔をあげた。
 みんなが急に注目したもんだから、当の本人のKちゃんも まったくサバケテル男なもんで笑った。
 マーちゃんも笑った。リンダも笑った。マダムが1番笑った。
 蝦夷梅雨はもう終いだから、乾いた空気、なおもクーラーで乾かされて、みんなの乾いた笑い声は開け放った扉の向こうに抜けていった。
 マダムはそして、今宵もすすきのopen・・・

Posted by tomoko at 01:21 PM | from category: 日記
Comments
No comments yet
Trackbacks
トラックバック
このエントリにトラックバックはありません
このトラックバックURLを使ってこの記事にトラックバックを送ることができます。 もしあなたのブログがトラックバック送信に対応していない場合にはこちらのフォームからトラックバックを送信することができます。.