June 19, 2006

単発不定期連載小説  亀蔵日誌

 亀蔵は、竹屋の家の縁台に腰掛け昼の弁当を食べていた。彼には、着物の染み抜きという本職があるが、時勢柄めっきり仕事も減り、庭仕事やら雑用で小遣い稼ぎをしていた。 そこに、女主人の娘の千鶴がお茶を運んできた。 
 姐さん最近お店は繁盛してますか。それがね、亀さん、夏が来たっていうのにちっともよくないのよ。おっきな会社はボーナスが出てるとこも結構あるのにね。千鶴は大輪の牡丹を背負って妙に艶かしかった。
 普段は無口な亀蔵だがはついあることを告白したくなった。最近の彼は、ある決意とそれを実行にうつした自分を誇らしく思い、だれかれなく語りたくなるのをじっと我慢し続けていたので、千鶴の聞きたがりのいたずらな瞳に誘われ、とうとう告白してしまうのである。
 じつは姐さん、聞いてください。
 千鶴は盆を置いて、縁側の籐の椅子に深く腰掛けた。 つづく
 

緑の女神

 私は大きく開け放った窓から沢山のメラトニンを浴びた。薄曇の夏空は目前の山際に立つアンテナの鉄塔をくっきりと映している。
 時は午前5時。私はかねてから思い描いていた計画を実行するため、早起きをした。昨夜ワールドカップ クロアチア戦を見終えた瞬間に力尽きて寝たので気持ち良く目が覚めた。携帯電話のカメラのテストをし、大浴場に携帯した。
 他の目覚める前に誰もいない浴場でこっそりセルフタイマーをセットして、わが身の恥ずかしい部分を上手に隠した入浴シーンを撮影する予定だったのだ。
 しかし、なんでこんなに沢山の女たちが入っているのだろう。が、しばらくして、めげずにヒノキの露天風呂にタオルに包んだそれを持ち込んだ。
 まんまと私一人だ。構図を考えあぐねているうちに、またもや一人入ってきた。神戸から来た人だった。裸の付き合い、色々話して仲良くなって、よっぽど写して欲しいと頼もうとしたが、やっぱり切り出せなかった。
 今度は四時に起きよう。次の旅行計画を考えた。