January 09, 2007
亀蔵日誌
師走に入り、ちづるは忙殺されていた。あれもこれもと膨らんだ頭は今にも爆発寸前だった。ふと帳面から目を離し庭先を見ると、雪の無い風景があり、冬囲いの縄のくくりが気にかかった。亀蔵とは比べ物にならぬほどキッチリと芸術的な縛りだった。彼は庭師ではなく、何でも一応に出来る器用な男だった。
ああ、亀さんはどうしているのだろう。ちずるは気になったら、いてもたってもたまらずに手紙をしたためた。
今年は雪も少ないらしく、屋根の雪もお隣にはかかりそうもありません。亀さんが来られなく困っていたので、丁度良かったかもしれませんね。ところで腰の具合は如何でしょうか?リハビリ頑張って下さい。お庭仕事が出来るのは来春のことかしら。というような内容だった。
亀蔵は奮起した。姐さんに誉められる仕事がしたい。そして、例の妙なトレーニングルームで吾身を責めつつ
鍛えつつ、第4回目の手術日を迎えたのだった。
今、亀蔵はちづるの手紙を懐に忍ばせ白い天上を見つめている。やがて、看護婦は彼の目を塞ぐ。そしてそれが始まるのはほら、すぐのこと。
亀蔵は武者震いした。