September 01, 2006
亀蔵日誌 ちづる
まったく日の光の届かない深海に眠れるがごとく、目を覚ましてもどちらが上か下か、いったい何時頃かも判らない、そんな闇の深い夜だった。2階の寝室の窓のカーテンを開けると、庭に置きっぱなしにしたバーベキュー焜炉と七輪の炭の残り火が、赤々と燃えていた。あれは、テレビで見た外国の活火山の溶岩の色みたいだ。全てのものが焼き尽くされ、どろどろと溶ける様を想像して空恐ろしくなった。
日曜日、ちづるは精力的に庭仕事をこなし、ついでに知人を招いてバーベキューパーティをし、調子に乗ってワインを1本空け、片付けも中途半端に床についたのだった。
ああ、今何時かしら。月も無く虫の声だけ。お陽様が上ったら、焜炉と成吉思汗鍋と七輪片付けなきゃ。 そうだ、鍬(クワ)も出しっぱなし。 お母さん、刃を踏んだら頭打ち付けちゃうわ。そういえば、昨日、落とし穴に落ちた子いたし、埋めなくちゃ。
いろいろ明日の仕事の段取りを考えているうちに、真っ暗闇は ちづるを又、深い海の底に引きずり込んだ。